カイコの飼育（しいく）

【カイコ１０頭（とう）（匹）位の飼育（しいく）について】　
季節（きせつ）：６月～９月頃、品種：一代交雑種

１. 飼育（しいく）を始める準備（じゅんび）

1. えさとなる「桑（くわ）」の葉を探します。見つけたら持ち主に桑（くわ）の葉をとってもいいか、葉に消毒（しょうどく）をしていないかをきちんと確認（かくにん）しておきます。カイコは殺虫剤（さっちゅうざい）に弱いので、農薬（のうやく）がついている葉は与（あた）えられません。
2. ふ化する前に、きれいに洗った飼育（しいく）容器（ようき）(タッパーなど)を太陽に当てて日光消毒（しょうどく）しておきます。３齢（れい）位までの小さなカイコは、なるべく小さな飼育（しいく）容器（ようき）（子供の弁当箱（べんとうばこ）位）で飼（か）います。カイコや葉が乾（かわ）きすぎないことが大切です。
3. 箱の底に水を吸（す）いにくいきれいな紙をしきます。
4. カイコは農薬（のうやく）、タバコの煙（けむり）、蚊取り線香などで死んでしまいます。また、ネズミやアリなどにも食べられてしまいます。さらに暑（あつ）さや寒（さむ）さにも弱いので、エアコンの風が直接（ちょくせつ）あたらない場所で安全を確認（かくにん）します。

２. 幼虫の飼育（しいく）

＜ふ化（はき立て）＞
卵から幼虫が出てくることを「ふ化」といいます。およそ９日でふ化します。ふ化したばかりの幼虫は、黒い毛があるので「毛蚕（けご）」または蟻（あり）のように見えるので「蟻蚕（ぎさん）」とよばれています。

1. ふ化する前に卵を表面がなめらかでうすい紙に包（つつ）みましょう。
2. 普通（ふつう）のカイコの卵はあずき色をしています。ふ化が近くなると卵の色が青色に変わります。
3. 朝、明るくなるとふ化が始まります。

A　桑（くわ）の葉で育てる

＜１齢（れい）から２齢（れい）の飼育（しいく）＞

1. 飼育（しいく）容器（ようき）にふ化したカイコを入れ、桑（くわ）を与（あた）えます。
2. １齢（れい）の幼虫には桑（くわ）の枝の先から３番目、４番目位のやわらかい葉を、２齢（れい）には６番目、７番目の葉を５ミリから１センチ角の大きさにきざんで与（あた）えます。
3. 葉はしおれやすいのでぬれた新聞紙などをかぶせます。息（いき）ができるよう、ふたに小さな穴（穴）をあけて閉めます。
4. えさの与（あた）えすぎに気をつけます。
5. 「眠（みん）（脱皮（だっぴ））」と「掃除（そうじ）」の説明（せつめい）をよく読（よ）んで１齢（れい）から５齢（れい）まで成長を観察（かんさつ）します。

＜３齢（れい）の飼育（しいく）＞

1. 枝の先のやわらかく光った葉から数えて８から１２枚目の葉を与（あた）えます。３眠（みん）は３０時間位つづきます。

質問：眠（みん）に入る前のカイコはどんな行動をとるでしょうか？
答え：

＜４齢（れい）の飼育（しいく）＞

1. 桑（くわ）の葉は枝の先から下のかたい葉まで、全部与（あた）えられます。
2. 飼育（しいく）容器（ようき）の大きさを、平らで大きめの容器（ようき）（今までの３倍位）にかえます。
3. 容器（ようき）の中が湿（しめ）っぽくなったら、ふたをずらして風を通します。
4. ４日から５日間たつと眠（みん）に入ります。頭の後ろにうす茶色の三角形のようなものが見えます。これは５齢（れい）のカイコの大きくなった頭がすきとおって見えるからです。４眠（みん）のカイコは大きく、眠（みん）の時間が長いので（４０時間位）、眠（みん）っているところや脱皮（だっぴ）のようすを観察（かんさつ）できます。

質問：眠（みん）っているカイコを指や割りばしなどでつまんで別の場所に動かすと脱皮（だっぴ）ができなくなります。どうしてでしょうか？
答え：脱皮（だっぴ）をするために脚（あし）を糸でとめてあります。糸をはがしてしまうと脱皮（だっぴ）できません。肛門にふんがつまって死んでしまうこともあるので気をつけます。

＜５齢（れい）の飼育（しいく）＞

1. 脱皮（だっぴ）したばかりのカイコを「起蚕（きさん）」とよびます。
2. ９日間たくさん桑（くわ）の葉を食べます。カイコの一生のうちのほとんど（９０％以上）の量を食べます。桑（くわ）の葉の食べかたをよく観察（かんさつ）します。
3. すぐにえさを食べてしまうので、ようすを見ながら飼育（しいく）容器（ようき）のふたをはずします。扇風機（せんぷうき）やエアコンの風が直接（ちょくせつ）あたらないようにします。
4. ８日から９日目になると、急に食べるのをやめてじっとしていることが多くなります。お腹の中は食べたものがなくなる代わりに液状（えきじょう）の絹（きぬ）でいっぱいになります。見た目も黄色っぽく体が少し小さくなります。まゆをつくる準備（じゅんび）をしているのです。カイコはまゆをつくる場所を探してはいまわり、頭を左右にふり出します。このカイコのことを「熟蚕（じゅくさん）」とよびます。

B　人がつくったえさ「人工飼料（じんこうしりょう）」で育てる

＜１齢（れい）から５齢（れい）まで＞

1. 人工飼料（じんこうしりょう）を注文して買います。
2. 人工飼料（じんこうしりょう）をきれいに洗った竹べらなどで長さ１センチ厚（あつ）さ５ミリ位に切って、２から４個ならべておきます。乾（かわ）いたえさは食べないので、乾（かわ）かないように飼育（しいく）容器（ようき）のふたを閉めておきます。息（いき）が出来るようにふたに小さな穴（穴）をあけておくとよいです。
3. 人工飼料（じんこうしりょう）は手で持つと雑菌（ざっきん）が付いてくさりやすいので、できるだけきれいな割りばしなどで持ちます。
4. 使いかけの人工飼料（じんこうしりょう）は、乾（かわ）かないようにして冷蔵庫（れいぞうこ）にしまいます。
5. 「眠（みん）（脱皮（だっぴ））」と「掃除（そうじ）」の説明（せつめい）をよく読（よ）んで１齢（れい）から５齢（れい）まで成長を観察（かんさつ）します。
6. 人工飼料（じんこうしりょう）で飼ったカイコは、途中（とちゅう）から桑（くわ）で飼育（しいく）することが出来ます。最初に桑（くわ）を食べたカイコは人工飼料（じんこうしりょう）を食べないので気をつけます。桑（くわ）の葉のほうがおいしいからです。

ポイント【眠（みん）（脱皮（だっぴ））】
カイコは成長するために体のひふを新しくします。そのためにえさを食べるのをやめて、まるで人が休んで眠（みん）っているようになります。この時期を「眠（みん）」といいます。体が光ってきて、食べるのをやめ、足を糸で葉などに固定して体が動かないようにします。この時期は何も与（あた）えず、ふたを開けて飼育（しいく）容器（ようき）の中を乾（かわ）かします。１眠（みん）と２眠（みん）は２０時間位つづきます。

ポイント【掃除（そうじ）】
それぞれの脱皮（だっぴ）が終わったら、飼育（しいく）容器（ようき）の底にしいた紙をそのまま取り出してから新しい紙をしきましょう。手洗いしたきれいな手や割りばしを使い、取り出したカイコを容器（ようき）へもどし、きざんだ桑（くわ）を与（あた）えます。飼育（しいく）中はカイコの健康（けんこう）のため、飼育（しいく）容器（ようき）はいつもきれいにします。

３. まゆづくり（上（じょう）ぞく）

1. まゆをつくらせるためにカイコを「まぶし」という道具（どうぐ）に入れます。カイコは糸をはきだして半日以上たつと今までとちがった色のふんとおしっこをします。まゆをつくる前に、体の中のいらないものを全部外に出すのです。まぶしの下が汚（よご）れるので、水を吸（す）う新聞紙などをしきます。２日から３日間でまゆづくりが終わり、まゆの中で幼虫からさなぎになるために脱皮（だっぴ）します。まゆを切って中を観察（かんさつ）してみるのもよいです。まぶしに入れることを「上（じょう）ぞく」とよびます。
   A オスとメスのちがい
   (要画像) (要画像)

2. まゆをつくってから７日目位にまぶしからまゆを取り出します。そのことを「収繭（しゅうけん）」とよびます。それまでは中で蛹（さなぎ）が成長しているので、さわらないようにします。ここで観察（かんさつ）を終わりにすれば生糸（きいと）をつむぐための材料になります。
   A　まぶしの種類
   (要画像) (要画像) (要画像)
   B　かんたんなまぶしの作り方（ダウンロード）

４. 羽化（うか）

1. カイコが蛹（さなぎ）になってから、成虫のガになるまで１０日間位かかります。体が成長して準備（じゅんび）ができると「羽化（うか）」がはじまります。羽化（うか）の１日から２日前になると、蛹（さなぎ）はよくおしりをくるくる回すようになり、まゆが急に転（ころ）がることも。中でおしりを回しているしるしです。ふ化と同じように、羽化（うか）も朝に起（お）こるとこが多いです。
2. 羽化（うか）した後にオシッコをします。変身するときにいらなくなったものをためておいて、それを体の外に出すのです。
   質問：カイコガが出てきた後のまゆの中はどうなっているでしょうか。
   答え：脱皮（だっぴ）殻（から）が２つ入っています。カイコから蛹（さなぎ）になる時の殻（から）と、蛹（さなぎ）の抜け殻（から）です。
3. 羽化（うか）して羽が乾（かわ）くとすぐにオスはメスを探して「交尾（こうび）」をします。メスはフェロモンというにおいでオスを呼びます。
4. メスは交尾（こうび）が終わって３時間から１０時間位で「産卵（さんらん）」を始めます。

5. 産卵（さんらん）

1. 卵はのりのようなもので付いているので、産み付けられたところからすぐに取れたりしません。１日から２日かけて５００個位の卵を産みます。カイコガはオスもメスも一週間位で死んでしまいます。ふ化してから４０日から４５日の命です。
2. 卵の色の変化を観察（かんさつ）してみます。あずき色に変化すれば来年の春にふ化する卵。変化がないのは交尾（こうび）をしていない不受精卵（ふじゅせいらん）です。
3. 産卵（さんらん）した卵を来年の飼育（しいく）観察（かんさつ）に使うのはやめましょう。

保護者の皆様へ

1. ここでは普通（ふつう）品種（一代交雑種）の飼育（しいく）について説明（せつめい）しているので、年２回以上孵化する品種については直接（ちょくせつ）お問い合わせください。
2. 色が変わって来年の春にふ化する卵は一代交雑種なので、生まれて来る子供はうまく育ちにくくなります。例えばふ化が悪い、病気に弱い、斑紋がバラバラになる、繭が小さいなど品質が落ちて観察（かんさつ）に適さないのです。一代交雑種は１回だけの品種であることをご理解ください。尚、原種等の譲渡は行っていません。

6. カイコの命

1. カイコの飼育（しいく）をしてみてどうでしたか。カイコは飼育（しいく）容器（ようき）からにげないし、成虫になっても飛べない虫です。しかし大昔のカイコは、えさを探すために動きまわったり、にげたり飛んだりできました。長い間人間に大切に飼われているうちに野生（やせい）の機能（きのう）が退化（たいか）してしまい、おとなしく飼育（しいく）しやすい虫に変化していったのです。人間につくられた虫なので野生（やせい）にもどれません。
2. 人間は昔からまゆを煮（に）て絹（きぬ）の糸や布をつくるためにカイコを飼（か）いました。まゆを煮（に）ると中の蛹（さなぎ）は死んでしまいます。人間はカイコの命に感謝（かんしゃ）して、まゆは１粒もむだにしないよう、大切に使いました。
3. 飼育（しいく）観察（かんさつ）が終わったら、カイコがつくったまゆを煮（に）て「糸くり」や道具（どうぐ）や歴史（れきし）のことを調べてみるのもよいです。（ワークシートボタン）

おぼえよう！カイコの体

（体photo）(斑紋photo)

調べてみよう！カイコを飼うときに使う言葉（ようさん用語）

1. 蚕箔（さんぱく）2. 化性3. 催青（さいせい）4. 掃立て（はきたて）5. 蟻蚕（ぎさん）6. 稚蚕（ちさん）7. 壮蚕（そうさん）8. 起蚕（きさん）
9. 眠（みん）10. 齢（れい）11. 除沙（じょさ）12. 熟蚕（じゅくさん）13. 蔟（まぶし）14. 営繭（えいけん）15. 越年卵（おうねんらん）

やってみよう！カイコの不思議体験（ふしぎたいけん）

1. まゆクラフト（ダウンロード）
2. 糸くり（ダウンロード）
3. まわた（ダウンロード）
4. 平面けん（ダウンロード）

見学ワークシート

展示物を見ながら学習できるワークシートです。展示室受付前にもあります。

1. カイコの体について（ダウンロード）
2. 道具（どうぐ）の名前（なまえ）（ダウンロード）
3. 絹（きぬ）の歴史（れきし）について（ダウンロード）

学校の先生方へ

出前講座・小学生向き学習プログラム（対象：上伊那郡内）

1. カイコの飼育（しいく）学習（ダウンロード）
2. 育てた繭でまゆクラフト（ダウンロード）
3. 育てた繭で糸繰り（ダウンロード）