丸紅株式会社のご協力を戴き貴重な所蔵物である桃山文化の粋を極めた“傾国の佳人淀君”の小袖と平和な江戸文化の象徴とも言える雅な小袖・振袖などの特別展を企画しました。
桃山時代は戦乱が続き、農地は荒廃。製糸技術は停滞し、特に細繊度の生糸は外糸(主として中国)からの輸入に頼らざる得ない時代でありました。ですので史的観点からして淀君が身にまとった小袖は、外国糸であったと思われます。しかし、蚕織と辻が花染のような染色意匠の技術は戦乱のさなかにも着々と高度な技術を育んできたことがうかがわれます。これに比べて、江戸文化の爛熟期は平和な時代、しかも鎖国政策により外国の影響の少ない自給自足の時代でもありました。江戸期の雅な着物は蚕品種を育成し、生糸生産・機織・染色意匠も総て日本人の技法により創り上げられた製品であります。日本人の文化を語る上でシルクを無視することは出来ません。
2000年の歴史をかけて、日本人の体形と生活様式を組み合わせて洗練を重ねてきた伝統ある和服・絹製品であります。400年前の手法に戻り、日本在来種である蚕を飼育、まゆを塩漬けの古方で保存、手回しの座繰りで生糸を紡ぎ、当時の優れた“辻が花染”の技法を再現し染め上げ、精魂込めて縫製し復元した“淀君の小袖”と江戸時代に多くの職人の手により創意工夫を込めて仕上げられた小袖や振袖を比較ご鑑賞いただき、400年の歴史と共に衣服を超えた芸術ともいえる見事な先人の技術と美意識をご理解いただければ幸いであります。
図録の紹介
図録 収録内容
図録の購入方法
TEL.0265-82-8381/FAX.0265-82-8380
受付時間 9:00〜17:00
休館日 水曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始